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2013年10月11日金曜日

代わり目に思う

そういう訳で自分的に燗酒の季節がやってきました。もう少し寒くなると更に美味しくなりますね。
こだわりで湯煎の道具を買いましたが、レンジでチンすりゃすぐにできる便利な時代です。
その昔は一旦竈の火を落としてしまうと火の気が無くなり、お燗つけるのもようようの事ではなかったようです。

落語の噺に「代わり目」というのがあります。
飲んだくれの亭主が夜更けてからへべれけで帰宅し、更に飲もうとおかみさんをおでん屋まで行かせ、つまみ買ってこさせようとします。すったもんだの末出かけて行くおかみさん。そんな彼女に心では感謝しているの惚れてるのと詫びの言葉を一人ごちますが、実はまだ玄関にいて聞いてたという。
江戸前ではこのあたりが下げになる場合が多い短い噺ですが、上方では後半に続きます。
一人になった主人公、通りかかった夜鳴きのうどん屋に酒の燗を頼みます。うどん屋の方では食べてもらえるものと言われる通りにしますが、この飲んだくれの話の長い事!おまけにうどんは嫌いときて、しまいに歌まで歌わせられそうになりほうほうの体で逃げだします。
帰って来て訳を聞いたおかみさんが申し訳ながり、うどんを食べようと呼び戻しますが、通行人から呼ばれてると言われたうどん屋。「とんでもない!今行ったらちょうど銚子の代わり目でございます」

あまり派手なところの無い噺ですが、夫婦のやり取りやその機微、主人公の独り言に何とも味がありまして、特にうどん屋相手に幼馴染の男やもめが娘を嫁に出す時の件を語って聞かせるところは、思わずこちらも泣いてしまいます。業の肯定論を真っ向から否定し、爆笑第一を旨とした桂枝雀の高座でもこの辺は聞かせましたね~!
その昔の裏長屋にいたどこにでもあるような夫婦の話ですが、ガサツな中に仄見える細やかな情愛。いいもんです。
ま、竈も夫婦も一旦消えた火はもう燃えないってとこですか。ほっときなはれっ!


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