同チャンネルでかつて社会現象にもなったドラマと言えば「おしん」ですね。大根飯しか食えないのが可哀想だってんで、主演の女の子の家に全国からお米が届いたというのは有名な逸話です。ドラマと現実混同しちゃうくらい大人気!みたいな扱いでした。
同じような話で以前新聞の投書に、サザエさんのカツオとワカメが良い子で大ファンですが食後の片づけを手伝わないのはいかがなものか?ってのがありました。これもまた同一線上の和みネタなんでしょうか?
僕はちょっと怖いと思いますね~。それぞれ送った人や書いた人は大真面目なんでしょうが、そのての罪の無い勘違いみたいなものが時として大きな社会のうねりみたいになると、しかも誰かに恣意的に誘導されたりなんかすると、結果的にもの凄く罪深い事を招くような気がします。
元経産省キャリアがブログで復興不要を暴言的に書いたと騒がれてますね。まさに非難轟々ですが、僕は怒るよりも違う意味で驚きました。それは自分の思考の中に全く無かった意見で、そんな事考えてる人がいるという事についてです。失言暴言の類は本音のチラ見せですから、言った当人は大真面目にそう考えてるんですね~。そこには当人なりの理屈がある訳で、それが常識的に間違った事であるとしても、ざけんじゃね~よっ!ぶっ殺せっ!とバッサリやっちゃうのはやっぱアブないんじゃないでしょうか?その考えの根拠を探り、だから違うというところをはっきりさせて、改めて自分の意見に取り入れるくらいの冷静さと寛容さが必要だと思いますね。
今回のキャリアの人は、現場行ってじいちゃんばあちゃんと飯でも食えばすぐ思いなおすんじゃないかしらん?
このところ「永遠のゼロ」や「終わらざる夏」を読み、パブリックビューイングで最終回見ながら涙流す人達に共感しつつも、無辜なる民の原罪というパラドキシカルな事を考えたりしてさ。面白くもなんともない小理屈でしたね?ぐみんなたい・・じぇじぇっ(^_^;)
戦後秘史とされる占守島の戦いを描いたこの作品は、冒頭、終戦間近い市ヶ谷の大本営参謀本部作戦課から始まる。エリート中のエリートで構成されるこの部署で立案された作戦に基づき、それに必要な人員の補給すなわち動員は、各方面軍、各旅団、各師団、各連隊へと下達されてゆく。それに伴い机上の数字であったものが、次第に召集される一人ひとりの人間の姿に肉付けされてゆくのだ。
これも始めて知ったが軍籍というものは出身地によって細かく決まっており、例えば岩手出身なら召集を受けたが最後、今日は東京でサラリーマンをしていても、三日後の期日までには全てを捨てて故郷岩手の連隊に馳せ参じる事が絶対であった。そして召集する最終単位の村役場では、担当者が軍籍簿の中から適当と思われる人物を選んで召集令状・赤紙を作成して届ける事になる。とはいえ狭い村社会においてはそれぞれ個人的な知己もあり、働き手を奪われて困窮の極にあることも知りつつ、表面的に名誉とされている知らせをもたらすこの作業が、いかに臓腑を抉られる様な苦痛に満ちたものであるか、作者は選ばれる者選ぶ者の日常を丹念に描き出すことで肉薄している。
千島列島の更に最北端に位置する占守島。無条件降伏に伴う軍使受け入れの通訳という密命を自身知らぬ間に負わされた主人公片岡は、45歳の年齢上限で軍役に耐えられぬ体ながら、翻訳家の英語力を特業として、苦学の末掴んだ東京での幸福な家庭を奪われ北辺の島に送られる。日本人が等しく恨み骨髄とするソ連の火事場泥棒的参戦より更に後、終戦後三日を経ての一方的攻撃に対し守備隊はどのように立ち向かわざる得なかったのか?
浅田作品の特徴であるモノローグを敵味方問わず多用しながら、物語は避けようの無い激突に向かって進んでゆく。しかし本当にそうだろうか?
国家の意思が避けようの無い戦争を生んだとしても、その意思を作るのは人である。日露戦勝の亡霊である統帥権も、独裁者の跳梁も、踊る個人のパントマイムの影が化け物のように肥大した姿であるが、影と違うのは踏まれたものたちが血を噴出してもがき苦しむことだ。そしてそれは震災後のこの国にも、まだ脈々と受け継がれている。次元は違っても、我々もまたその中に生きている。戦争の理不尽と不条理をまさに具現化したような最果ての島の戦いの中で、女子挺身隊員石橋キクの、自分も戦争に加担した一人としてという叫びが重い。
彼女達400名が無事根室に帰りつけたことと、片岡の息子が疎開先からやはり脱走した女の子と東京までたどり着けたことのみは、この陰惨な物語の中で唯一の救いである。特に譲と静江の道中は一種のファンタジーとも読める。上野駅での母親との出会いのシーンは忘れがたく、やくざ蔓助の優しさはチンピラから叩き上げ、辛酸の末作家となった浅田にしか書き得ない場面であろう。生きて欲しいと願う登場人物たちがみな、永久凍土の泥の中で惨めに殺されても、この子らは生きてゆく。それだけが希望である。