定期的に読みたくなる作家のひとりに沢木耕太郎さんがおられます。
学生時代読んだ「破れざる者」に衝撃を受け、新社会人なのに出社ギリギリまで夢中で読んでた「テロルの決算」、そして旅する若者のバイブルともなった「深夜特急」。
ノンフィクションのルポルタージュでありながら透徹した視線の先に独特の感性と表現を持ち、ある種の詩情さえ感じさせるラストの締め方はこの方だけのスタイルと言えましょう。
で、最近読み終えて呑気に読後感でも書こうかと思ってたのが「天路の旅人」なんであります。
戦況の悪化する満州で満鉄職員から東亜義塾塾生へと転じ、放校後は密偵を志し蒙古人ラマ僧ロブサン・サンボーに身をやつしモンゴル、チベット、インド、更にはネパールからアフガニスタンへ(未到)と終戦を挟む八年間の長きにわたり苦難の旅を続けた西川一三の著書「秘境西域八年の潜行」を、本人への一年に及ぶインタビューを元に再編成した作品であります。
既に汽車や自動車もあるにはあった時代とは言え辺境の奥地は未だシルクロード時代の隊商そのままであり、時には三か月間人家も食糧調達の術もない場所を乗用のヤクを買えないまま徒歩で踏破するといった過酷極まりない旅を、また時にはヒマラヤの峠越えで凍傷を負い貧民窟に起居するような最底辺の生活をしながらも仏典を学びご詠歌を身に着け、やがて身一つで托鉢しながら完全に自活した旅の方法を見出すんであります。
当初国家の為であった潜行が敗戦を知ったあたりから片雲の風に誘われ漂泊の思い止み難くといった旅そのものが目的となっていく姿は求道者のそれに似て、性病を恐れての事とは言いながら女犯を固く戒めそれがために他人事や頼まれ事に諸事精力を注いだ結果行く先々で信頼を得、まるで遊行の如き旅はやがて一椀の糧の他欲する物の無い一種の悟りの境地とも見えるんであります。
同時期同地域にいて一緒に旅することもあった塾の同窓木村肥佐夫とともに確保され帰国を余儀なくされて後、木村が先んじて著した「チベット潜行十年」によってアカデミズムの世界である種の成功を納めたのに比べ青森の一店主として元旦以外一日も休みを取らなかったという西川のその後の人生は、あたかも辺境のおいてそうであったように物事への執着を捨て去ったもののようであったという。
ただ酒だけはやめられなかったってとこに激しく共感。
でね
ビックリしたんですわ。
今度のもの凄い洪水の場所がまさしく西川の旅した場所のひとつシガツェ付近だという。
CG全盛の世の中でさえあんなもの凄い映像は想像を絶しております。
いつか行ってみたいなんざとても言えたもんじゃありません。
ひとりでも多くの方が救助されますように。
また亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
ちょっとイラストも描けません 合掌