百人以上の出し子が二~三時間ほどの間に全国で一斉に犯行に及んだってんですから携帯やネットの社会とはいえ、主犯の人間って頭良くて企画力行動力も人並み外れてるんでしょう。犯罪への暗い情熱とでも申しましょうか、善用に向ければ何事か成し得たかもしれないものを残念なこってございます。
犯罪は犯罪として許されざるものとはいえ、直接人を傷つけず多額の現金を奪うこの手の事件というのは昔から人々の興味を引き語弊はありながらある意味人気のものではあります。
近年「オーシャンズ11」にリメイクされその昔フランク・シナトラが主演した「オーシャンと11人の仲間」であるとか、刑事コロンボで一世を風靡したピーター・フォークの「ブロンクス」とか映画のジャンルとしてもあるくらいに。
これらはあくまでも頭使ってトリック組み立てて誰も殺したりしないところがポイントなんでありまして、やたら爆破して撃ちまくるような最近の映画は車で突っ込んで根こそぎかっさらういわば芸の無い犯罪が跋扈する現代の風潮の写し鏡ともいえるんじゃないでしょうか。
あたくしが小学生の頃起こったのがあの「三億円事件」です。
五十円あれば駄菓子屋で大名遊びのできた時代の三億円は子供心にも天文学的金額で、億という概念に生まれて初めて触れた出来事でもあり、同時代を生きた人々の記憶に強烈に残っておるところでしょう。四コマのサザエさんの中にも、マスオさんが輪っかのイカのおつまみ並べて溜息をつくなんてのがありました。
慌ただしい師走の最中人気のない府中刑務所の壁際で起きたこの事件は、確か当時の第一勧銀に配られるボーナスを積んだ現金輸送車が白バイ警官に変装した犯人に停められ、爆発物を語らった発煙筒で文字通り煙に巻かれているうちに車ごと走り去られたという。
奪われた金額の膨大さもさることながら推理小説さながらのその手口の鮮やかさ、更には時効をとうに過ぎて現在に至るも捕縛されない謎に満ちた犯人像もあいまって様々に憶測を呼んでは、数多くの小説、ドラマ、映画の題材にも取り上げられた昭和史に残る大事件となりました。
そういや時効直前の中学生時代、担任の先生に回す班日記にあのモンタージュ写真の絵に描いて褒められましたわ。今とやってる事変わらんぞ (-_-)
池波正太郎作品に登場する本格派を自任する盗人は「殺さず、犯さず、盗まれて難儀するものからは盗らず」の三カ条を頑なに守り、内部に放った一味の者の手引きを得てお店の全員が眠っている間に煙のように盗み消え去るためには五年十年単位で時間をかけたという。
時代が下るにつれ一家皆殺しにして強奪する急ぎ働きが横行し、名を惜しむ本格派の盗人の首領はそんな世の中を慨嘆したそうな。鼠小僧もいた昔々のお話。
それに比べりゃ今回の事件、やっぱドラマツルギーに欠けますわな。いいんすけどね、剣なんぞない方が。
ところでドラマツルギーって何だっけ?
賊が違うんですけど・・・(^^; |
0 件のコメント:
コメントを投稿