高校生の頃FM東京のラジオドラマ「音の本棚」を録音しては聞いており、B・Tモントフ作「High」という作品が原作のドラマのバックに流れる音楽に強く感動しました。後にそれがサッチモことルイ・アームストロングの「明るい表通りで」だったことを知りジャズを聴くようになりまして。
現在のゆるキャラ的な特徴ある風貌と明るいキャラクターでジャズを聴かない人にも広く知られ、世界的人気のあったルイ・アームストロング。
彼の歌う「what a wondeaful world」 は味のある嗄れ声と対照的に美しい旋律の妙でスタンダードナンバーとなっており歌い手としての側面が一般的ですが、ラグタイム、デキシ―ランド、スウィングへと続くジャズの黎明期からモダンジャズの時代に渡って巨大な足跡を残した偉大なトランペットプレイヤーでした。
特に「ウェストエンド・ブルース」はモダンジャズへの新たなスタイルを開いた歴史的名演奏とされ、ラストのキャポッというミスノイズまでもが有名です。おそらくその頃のスタジオというのは今に比べてかなりラフで、もう一つルイの専売特許であるスキャット唱法が生まれた時の録音でも周りの笑い声が録音されてしまっています。歌詞を忘れて苦し紛れにドゥドゥドゥパパパァ~と歌う姿にこらえきれず笑ってしまったんですね~。それが後々ジャズの新しい唱法となったんですから偶然の産物とはいえ、やっぱ名を成す人はどっか違うんでしょう。
レコードの時代、あたくしが絶対お勧めしたいのがこちら「エラ&ルイ」!
全曲エラ・フィッツジェラルドとのデュエットで編まれたこのアルバムは全編まさにセピア色!シンガーとしてもプレイヤーとしてもルイの真骨頂といえる傑作です。
デジタル音源でも出されているようですが是非あのプツプツいうレコードの、温かみのある音で聴いて欲しいです。
ちなみに初対面の時エラがルイの巨大な口に驚いて「such a big mouth!」と叫んだのがあだ名のサッチモの語源になったとか。ジャケット写真でも小柄な愛されキャラですな。
人気の高まりと共にサッチモはアメリカの音楽大使として世界を回りました。しかし人種差別問題に関しては一切公式のコメントは残していません。一部の仲間からは白人のペットなどと揶揄されたこともあったようです。
そもそもジャズが生まれた背景は黒人奴隷たちの労働歌や教会での讃美歌にあり、天性のリズム感によって彼らなりにアレンジしたゴスペルに端を発します。南北戦争後遺棄された楽器を手に野辺の送りや酒場での演奏に興じるうちそれがラグタイムとなり、デキシーランドとなりジャズへと繋がっていきました。その根本にあった黒人の涙とソウルをサッチモが意識しなかったはずはありませんが黙して語らずだったんですね~。
その点同じく世界を制したアリが強烈な個性で攻撃的に訴え続けたのとは対極にあったわけで、二つの大口の片方は口角泡を飛ばし片方は閉じたままであったという。
同じルーツを持つブルースがロックへと変化を遂げる中で、若者中心に音楽を通じて生まれた黒人へのリスペクトが世界を変えていったことを思う時、韓流ブームと相まってあたくしの中にはある感慨が生まれるんであります。
即ちそれこそが北風と太陽なのではないかと。自由と平等!地には平和を!
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