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2017年9月21日木曜日

耳から身になる

血筋を見ても特別太る体質ではないと思いますし年相応にお腹の出た現在でもおデブの部類には入らないつもりですが、大学浪人時代ちょっとキテまして、78キロくらいあったんであります。
受験勉強に名を借りてウダウダしつつ身体使わないで食べてばかりいたせいで、それについては一本のラジオドラマが大きく関わっておりました。
当時どこの局でも一本は持っていたラジオドラマの中でもあたくしのお気に入りはFM東京の「音の本棚」でして、毎晩テープに録音するくらい好きだったんであります。
その中でも特に繰り返し聞いていたのがこんなお話。

コスティンが食道楽な職場の上司ラフラー氏に味の分かる男と見込まれて連れていかれたレストラン「スビローズ」は紹介者のみの会員制のレストランで、何やら秘密めいた雰囲気のお店。一度でその味のとりことなった彼は毎晩のように連れ立って通い詰めるようになります。偶然にもウェイターをしていたのは、昔港でちょっとした諍いから助けた移民の若者でした。
そんな日々の中初めて食べたごくまれに出される「特別料理」はこの世のものとは思えぬほどの美味で、アミルスタンという辺境の地に住む羊の肉であるという。美食家にありがちな好奇心で一度でいいから厨房を見て見たいと思うようになります。
しかし奇妙なことにそれが出される時、必ず会員の一人が忽然と消えてしまうのです・・・?
たまたま一人先に来ていた夜あのウェイターから「何があっても決して厨房には入りませんように、命を救われたお礼でございます」と耳打ちされたのです。
はたしてこの店の秘密とは?

どこか「注文の多い料理店」を思わせるオチなのですが、これがね!
皿の並べられる音とかナイフ、フォーク、グラスの触れ合う音とか、いわゆるシズル感一杯で聞いてるだけでお腹すいちゃうようないい出来だったんですわ。
で、夜中に休憩と称してこれ聞きながらMCCのビーフシチューやボルシチの缶詰を大盛りご飯と一緒に食べていたんですからそりゃあ太りますわな ( ;∀;)


遥かな後年阿刀田高のエッセイの中にこの作品のことがちらりと出てきて、スタンリイ・エリンの「特別料理」という有名な短編小説であることを知りました。
ポーを嚆矢とするゴシックホラーから派生したいわゆる「奇妙な味」の小説の系譜で、ダール、ブラッドベリ、サキなどと並ぶプチ古典だったんですね~。
さっそく買ってドキドキしながら読んだけど・・・やはり味も小説も、思い出に勝るものは無いと知りました・・・。






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