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2011年5月16日月曜日

じ様の話

16年前に93歳で亡くなった母方のじ様は更科義詮という浄土真宗の坊さんで、奈良の新薬師寺に近い西勝寺という小さな寺の住職でした。最晩年まで酒とゴルフを愛した洒脱な人でしたが檀家制度が確立されている彼の地では日々の檀家回りが忙しく、関東の葬儀専門坊主とは全く違う暮らしを矍鑠として送っていました。
特にその説法は話芸の域に達しており遠くから聞きに来る人もいた程で、少年時代の夏休みを大阪の従兄弟たちとその下で遊び暮らした僕は人格形成の上で(そんな立派なものがあればですが)計り知れない影響を受けたものです。
一方で広島の寒村にあった若き日は同人仲間から将来を嘱望された歌人でもあり「揺籃」晩年に「自然法爾の道」二つの歌集を世に残しました。特に前者は昭和7年布教僧としてハワイに渡る直前編まれたもので素人の僕にその巧拙は分かりませんが、穏やかな視線で描かれた日本の原風景が浮かぶような気がします。

震災以来ライフラインの確保が叫ばれそれなくして生きられない現代人ではありますが、ガス、電気、水道何一つ無かった昭和初期の辺境の地で無名の歌人が写し取った作品世界にはそれでも人は豊かに生きられるという、何かしら心休まる物を感じます。
そんな訳でこれから折に触れて「揺籃」の中の作品をご紹介していきたいと思います。題しまして新コーナー「今日のギセン」 前振りは良かったんだけどなぁ・・
では一発目です。

 朝のまを 経読みをれば本堂の うらべさやかに 鶯なくも

じ様見てるか?みなさんよろしくお願いします。

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