会社では朝五時に現場スタッフが揃うので、最近はなるべく三時ごろから掃除に入り四時台には終われるようにしております。
それにしたって長いんだけど。
帰りの戸田橋もまだ混むことなくすんなり通れ、早めの晩酌では映画一本見るくらいの余裕も出来まして。
夕べ見たのが「二百三高地」。
あの頃は各映画会社が競って巨額の製作費の下、明治以降の大戦を描いた作品を作っていた記憶があります。
旅順港攻略という日露戦争の転換点として名高いこの大消耗戦を描き、文字通り屍山血河の戦場シーンは現在の特撮に比べれば大きく見劣りするとはいえ昔の邦画とは思えないすごいスケール感であります。
戦争指導者側と歩兵側両者からの視点で描かれ、机上と現場それぞれの苦悩は兵を決して一銭五厘の使い捨てとはしておらず、あおい輝彦演じる中隊長の部下ひとりひとりの描き分けや、特に仲代達也演じる乃木は静にしてなお内なる懊悩を滲ませて見事であります。
うちも二人息子がおりますからね~、二人とも戦死させてしまう乃木将軍には泣けてさあ。
ベースにあるのは司馬史観と見え乃木と児玉の会見など「坂の上の雲」的な挿話もあり、古武士の風格と詩人の側面から一個の人格者である反面司令官としては愚将であったという乃木像に終始し、そこは違うよなあと。
不凍港獲得を目指し北から迫るロシアの圧力に対し、文明国としては駆け出しの日本が時を待てば不利になるばかりと乾坤一擲の大勝負に出る伊藤博文の決断の場面は、国家危急存亡の時にあっていかなる苦悩のうちからそれが絞り出されたものであるかを見るにつけ、今がほぼその時にあるにもかかわらず旧態依然として些末な問題にすら右往左往する現政権の無能ぶりと政治家として一人の人間としての覚悟の無さを慨嘆せずにおれないんであります。
ああ巳んぬる哉